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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

彼らはその肌で、ゆうべからの宮将軍御所の空気やら町々諸所の武家の門の異常な緊張をもうちゃんと嗅ぎとっていたとしかおもわれない。

もっともこんな雪では、淀、宇治川の荷舟も入らず、東西の市の棚もほとんど業を休み、辻猿楽の小屋の鳴り物も大原から出てくる販女の声も聞かれはしなかった。――それとなお、この日例によって二条の馬場へ、天皇、皇太子の臨幸をみる予定であった十番の競馬も中止となったので、つねならば町を染める妃車や公卿車の雲集もまったく見えなかったことでもある。

すると。午もやや過ぎたころだった。

一輛の牛車が、五条大橋口から富ノ小路の里内裏のほうへむかって、黒いわだちの痕をのこして行くのが見える。

牛車は三位の格式のものであり、参内の盛装の人を乗せていることはいうをまたない。牛童と装束筥をになった供のほかは、車副も先駆もすべて、よろいに身をかためた騎馬武者だった。さらには、いかにも軍紀整然とみえる歩兵の長柄隊、長槍隊、弓隊などが三段になって、雪かぜの中を面もそむけず粛々と行く。

こはこれ、ただの参内車ともみえないから、すわ、といったような驚きを町のしじまに与えたのはムリもなかった。