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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
やがて、むくと目ざめられて、
「……水っ」
と、大声で求め、そのお声で、すぐ妃の君が玻璃のを盆にささげて、細殿の簾ごしに見えたお姿と共に、外いちめんの銀世界にも初めて気づき、
「雪か」
と、まばゆげな眉をしゅんと持ち直した。そして玻璃※(「怨」の「心」に代えて「皿」、第3水準1-88-72)の水をひと息にのんでから、ふと、妃の君のどこかに氷のような憂いの翳があるのを知って、ふと口かろく、その憂いの君へ戯れられた。
「ああ美味かった。だが水ではなかったと、腹の虫は泣いている。……夜来、酒のほかなにも食べていなかったからな。湯漬けでもよい。いやあたたかな白粥ならなおいいぞよ。はやく膳のしたくをさせてくれい」
そのとき、廊下の侍女がなにか言っていた。いやそれいぜんに、ひどくあらッぽい足音が聞えていたので、宮はすぐ細殿を通って渡りの前まで歩いて出られた。
「お、良忠か」
「はっ」
「なんぞ敵のうごきでもみえ出したか」
「いやどうも、異なことに相なってまいりました」
「異なこと?」
「つい今しがたまでは、何ら変った報もなく、加茂川をはさんで六波羅の岸もこなたの町も、朝からの降りしく雪に、ひッそりかんとしておりましたところ、ただいま新田の一騎が飛んで来ての報によれば、尊氏の車が参内の装いで大路を打たせ、悠々通って行ったとのことにご