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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
検校
の官名をゆるされたので、盲のことゆえ、彼が介添えのもとにまかり出たものであるとか。
「……禁裡のうち、たれの申すところも、ほぼそのようなことにござりまして」
と、千種忠顕の重臣は、いかにも言いづらそうに、
「さればどうやら、六波羅の軍兵集めとする取沙汰は、やはり虚伝で、法要のいとなみが、真実のようにござりまする」
と、この寒いのに、汗して言った。
宮は、大きく空を打ったお眼である。張り充ちていた闘志も画策も音をたてて血の中からくずれてゆく。お顔には青白い惑いだけが残ってみえる。
だが疑いをのこす余地すらない。それさえもすぐ消えた。――尊氏はすでに去年の秋、亡父の三回忌をいとなむべきを、戦後早々の多事で、今年にのばしたものと、千種の使いから重ねて聞かされたからである。
また尊氏は日頃「わが亡父には命日なし」といっているのだそうで、そのわけは、彼は父の死の枕元からあわただしく笠置攻めの出征を命ぜられて立ち、陣中に父の位牌を持ってあるき、笠置陥落後、初めてかたちのみの法要を征地の冬でしたきりであると、つねに人に語っていたという。
「もういい」
宮はお首を振った。