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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「いやいや。なにかおれの胸のものは今、やりどころなくなっている。深々と胸にも雪が降り積むようだ……。そして白々しい虚無がおれをたまらぬ淋しい子にひがませている。急に、父の皇へお会いしたくなったのだ。会って、ただの子として父として、一度いろんなことを、恨みつらみをも、言ってみたい」
「めっそうもない。この夕には、さきには尊氏も参内しており、ほか上卿の方々も、みな御一会でござりましょうに」
「もちろん、そんな中ではいわん。あるいは、父皇の御顔を見たら、それなりいえずにしもうことかもしれぬが」
「何はあれ。尊氏ごときとご同席では、折も折、せっかくな御宴もお愉しいものには相なりますまい」
「くどい」
「はッ」
「行くと申すになにを阻む。おれは仮病をつかうなど大の嫌いだ。それよりは牛車の用意でも命じておけ」
宮はすぐお支度のつもりとみえる。彼をその場におきすて、さっさと、妃の宮の御殿のうちへ入ってしまわれた。
身ぎよめにお湯殿へ入る。お髪もむすぶ。
ご装束、着帯。
そして宮は、冠台の冠を取ってさしあげる妃へ、いつになくこうお優しかった。
「……雪はやむまいし、宮中の御会も遅うなろうから、そなたは先に寝まれたがよい。