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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
廻廊の廂は浅いので、そうしているまも冠の纓や束帯の裾には吹きこむ雪の明滅が妖しいまでに舞っては消えている――
尊氏
と聞き、また、
准后の廉子
と聞くからに、大塔ノ宮のおむねは、それだけでもうただならぬもののようであった。尊氏と准后とのあいだに、いま在房の言ったような親しい交渉がいつのまに結ばれていたのか。ふとそんな御懐疑もゆう然とおこころを晦くして進まぬ足にしていたにちがいない。が、もうこの廻廊をあとにもどれるものではなかった。――在房の脂燭もまた早や先に立っていた。宮をみちびいて、いや一歩一歩牽いてゆくようなまたたきを見せて、さきへ歩いて行き、やがてのこと、
「おあぶのうございます。鈴の間の階へかかります。お気をつけて」
と、廊の果てからさらに幅の広い階段を七、八段ほどのぼっていた。
そこからは、いわゆる殿上で、清涼殿の南の廂にあたるところである。そして謂うところの鈴の綱は、廊の隅柱から校書殿の後ろのほうへ張られてあり、主上の御座で蔵人らを召されるときそれを引き、鈴が鳴る。――で、ここの大廊下を鈴の間の廊と呼びならわしているのであった。
いましも、式部の権ノ大夫在房を先に、宮は大廊下の中ほどまで歩まれてきたが、何か、一抹の不審にハッとその御眉は吹き研がれたかのようだった。