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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
という怨嗟が街には充ちているありさまだった。
けれど、春ともなれば。
都は貴顕の、びんろう毛車や花漆のあじろ車で、どこにそんな飢えがあるかのようにしか眺められない。
正月の節会
小朝拝、百官の参賀
朝覲の行幸
二ノ宮(東宮・中宮)の大饗
子の日遊び
と、毎日が行事の式やら御遊であった。遠い王朝の頃とくらべれば、ずいぶん略されてはいても、二条内裏の諸門は飾り競う車馬の群れで朝夕、霞立つばかりであった。
だが、諸国の早馬は、時しもしきりに都門へむかって、北条残党の蜂起の急を告げていた。宮廷内の割れ目や、新政府不信の民心に乗じて、がぜん、諸国に高まってきた春早々からの兆候はそれだった。
谺のように諸国の乱は中央に敏感だった。
政局の危機とか、公武の違和でも生じると、かならず各地で北条残党の烽火が揚がる。
新政府が、その樹立いらい、もっとも悩まされてきた問題の一つである。――これの対策には武力しかない。その武力は尊氏の協力をまたねばならない。勅とあっても、在京の武門は、千種忠顕や新田義貞の下では、色よく派兵に応じるふうもないのであった。それが、尊氏の令だと、とにかく動く。