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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

現に。

いまは、みまかられたが、後醍醐の皇后ノ宮、西園寺禧子も、この一門の出であった。お若いころ、北山殿へ遊び、禧子を見染めて、よそへ盗み出し、やがて後に入内させたもので――それほどに、後醍醐もよくお遊びに出かけたことが「増鏡」の“秋のみ山”“北野の雪”など随所の巻に載っている。

「……なにっ?」

千種忠顕は今、そういって、いちど声をのんだ。

「昨今の北山殿は、まるで北条残党の根じろだとお言いやるのか。……そ、それは、まったくかの。いや何か、証拠でもあっての仰せか」

六月二十一日のこと。

客は、いや客ともいえない。

竹林院ノ中納言公重は、そんな閑寛たるふうではなかった。――ゆうべ思い余って一睡もとれなかったといっている。――が、意を決して、自分も一門の端ながら、余りな北山殿のおそろしい秘密なので、どうしたものか、その秘事一切をぶちまけに、これへご相談に伺い出たものと、さっきから、面を土気色にしているのであった。

「証拠と仰せられますか。さ……証拠といえば、この公重がその生き証拠でございますが」

「どうもちと、お話が切れ切れで、またいちいち意外すぎる。ひとつ初めから、おちついて、もいちど順を追って下さらんか。