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こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《胡堂百話(こどうひゃくわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 124,386 字 · 248 頁

青空文庫

江戸の匂い

声もよかったし、なまめかしさがあった。それにくらべて昇之助などは、芸はそれほどと思わないが、それで不思議に人気があった。

人気といえば、女流落語家で燕嬢というのがいた。戦後、たしか昭和二十三、四年ごろに女の落語家が現れて、新聞などが女性の第一号だと書き立てたが、本当は明治三十五年ごろの燕嬢である。いや、もっと以前にもいたかも知れないが、私のきいた範囲では、燕嬢が元祖だと威張っていた。

りゅうとした黒紋付で、頭は当時の最新流行、夜会巻きというやつだった。もう一人、高座の変り種に、ブラックというイギリス人の真打格がいて、異色編の両大関を張っていた。落語は、お世辞にもうまいとは言えないが、なにしろ珍しいので、うけていた。

ところで、この燕嬢師匠。実は私の友人の細君だったのである。千葉秀輔といって、ちょっと有名なドイツ語学者だが、私と同じ新聞社に、しばらく籍を置いていた。

女髪結の亭主というのは、三日やるとやめられないそうだが、この秀輔先生は、せっかく、燕嬢の亭主でありながら、どうせ亭主商売をやるなら、もっと売れッこの亭主になった方がいい……と考えたかどうか知らないが、今度は三浦環のあとを猛烈に追っかけはじめた。