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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

【第一回】

一

【第一回】

一

江戸八百八町が、たった四半刻のうちに洗い流されるのではあるまいか――と思うほどの大夕立でした。

「わッ、たまらねえ、何処かこう小鬢のあたりが焦げちゃ居ませんか、見て下さいよ」

一陣の腥い風と一緒に、飛沫をあげて八五郎が飛込んで来たのです。

「あッ、待ちなよ、そのなりで家の中へ入られちゃたまらない――大丈夫、鬢の毛も顎の先も別条はねえ、鳴神だって見境があらァな、お前なんかに落ちてやるものか」

平次は乾いた手拭を持って来て、ザッと八五郎の身体を拭かせ、お静が持って来た単衣と、手早く着換えをさせるのでした。

全く焦げ付きそうな大雷鳴でした。そうしているうちにも、縦横に街々を断ち割る稲光り、後から/\と、雷鳴の波状攻撃は、あらゆる地上の物を粉々に打ち碎いて、大地の底に叩き込むような凄まじさでした。

「驚きましたよ、あっしはもうやられるものと思い込んで、四つん這いになって此処へ辿り着くのが精一杯――どうも腹の締りが変な気持ですが、臍が何うかなりゃしませんかしら――」

「間抜けだからな、自分の臍を覗いて見る格好なんてものは、色気のある図じゃないぜ、第一お前の出臍なんか抜いたって、使い物にならないとよ、味噌が利き過ぎて居るから」