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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

「出ていって下さい」

つなははねつけるように云った。

「わたくしはなにも云いません、またなにも聞きたくありません、二度とわたくしに口をきかないで下さい」

「それでよろしいの、本当に」

「――――」

「あたしとあなたとはもう立場が違いますのよ、あなたが甲野のお嬢さんでも、あたしはもう哀れな孤児の厄介者じゃございませんのよ、あなたはいま、かよに命乞いをなさらなければならない筈だわ」

つなは黙って壁のほうへ向き直った。かよは笑って、手燭を持って立った。

「では気が折れたら呼んで下さいな、あたしもうしばらく此処にいるつもりですから」

「――――」

「それから万三郎さまになにかお言づけはなくって」

そう云って、大きくからからと笑いながら、かよは階下へおりていった。

――万三郎に言づけ。

つなの心は昏乱した。

かよの話をぜんぶ信じはしなかった。しかしすべてが嘘とも思えなかった。増六のことを知っているとすれば、かよと万三郎とのあいだに、どの程度かの交渉があったことは事実らしい。

――どの程度か。

つなは思わず口の中でそっと呼びかけた。

「いまどこにいらっしゃいますの、万三郎さま、どこに、――」