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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

三

などと云いながら、吃驚するほどの力で引張った。

「よしてくれ、本当に定宿があるんだ」

「うそ仰しゃいまし」

「嘘なもんか、上州屋仁兵衛というのが定宿なんだよ」

「まあお上手な、知ってますよ」

女はちょっと睨んで、声をひそめながら囁いた。

「本当はお伴れさまが先にあがって、あなたを待っていらっしゃるんですから」

「伴れだって、――」

「つい今しがたですわ、あれがそうだからって、わたしに教えて下すったんです、こっちが先に着いていることは内証にしてくれ、あとで驚かしてやるんだからって」

万三郎はどきっとした。

――敵の追手だな。

そう直感したのであった。

三

万三郎は黙って、女といっしょに茨木屋という宿屋の前までいった。さりげなく注意してみたが、こちらを見張っているような人間は眼につかなかった。

――本当に追手だろうか、それとも単純な人違いだろうか。

敵の追手だとすれば、自分のあとから跟けて来る筈である。追い越して、先に宿を取って、女中などに(内証で)呼び込ませるというのは、なにか理由があるにしても、あまりに廻り諄いやり方である。

――よし、ともかく当って砕けろだ。