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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

「あたしおよそ知ってます」

おちづは強く頷いた。

「あたしは街で育ったようなものだし、ごろつきやならず者たちの、云うことすることを聞いたり見たりしてきたんですもの、どんな事があったって驚きゃしませんわ」

「ああ、――あんたってひとは」

松吉は膝へばたりと手を落した。

――見たり聞いたりしたことがなんになるものか、いざ自分のこととなってみると、そんなものは少しも役に立ちはしない、人間はみんな、自分で火傷をしてみてから、初めて火の熱いことを知るものなんだよ。

こう云いたかったが、云ってもむだだということがわかっていた。松吉は溜息をつきながら立ちあがった。

「さあ手伝ってあげよう、着替えをしてお稽古にいっておいで」

春昼

一

万三郎は井戸端で汗をながしていた。

下帯だけの素裸になり、釣瓶で水を汲みあげては、肩からざあざあ浴びるのである。

※(歌記号、1-3-28)――嵯峨にては、ただ、片折戸したる所とこそ、きこし召し候え、さようの賤が屋には、片折戸と申すものの候――。

植込の向うから、女の謡う声が、いかにものどかに聞えて来た。

万三郎はなお水をかぶる。

筋肉のよく発達し、艶つやと緊張した膚を、水は白玉を飛ばして洗い流すが、膏にはじかれて水滴も残らない。