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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

四

めざす相手と会う符牒は「西の数寄屋」と云うのであった。

万三郎がそれを云うと、玄関へ出迎えた中年の、女中頭とみえる女が、ちょっと不審そうな眼で見あげた。

「私は代理なんだ」

気がついて万三郎が云った。

「それはどうも失礼致しました」

女はすぐに会釈をした。

「では御案内を致しますからどうぞこちらへ」

万三郎は女のあとからついていった。

広い廊下を二度曲ると、玄関の式台のような処がありそこから草履をはいて庭へおりた。

――これは壮大なもんだな。

万三郎は少なからず驚いた。

すばらしく天床が高い。太い柱も、厚いがっちりとした床板も、顔が写るほどよく拭きこんであり、障子や襖なども、重おもしくおちついて、ちょっと大名の御殿といった感じであった。

――ただ飲み食いをするだけなのに、こんな贅沢な家を建てるなんてばかなものだ。

彼はそう思った。

――こんな家で宴会なんぞやったら、さぞ高いものにつくことだろうが、――待てよ、もしかして勘定が足りなかったら困るぞ。

彼は兄から金一枚だけ貰って来た。当時、金一枚持っていれば、それで不足なときでも侍として恥ではなかった。しかし、その料亭の豪華な結構を見て、万三郎はにわかに不安になったのである。