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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

――たぶん相手が払うんだろう、向うのほうが上役なんだから、まさかこっちにおんぶすることもないだろうが、それにしても万一ということがあるからな。

兄貴のやつ吝なことをしないで、もう二三枚呉れておけばいいのに。などと、肚のなかで舌打ちをした。

「とにかく、思い遣りというものがないんだ」

「はい、なんでございますか」

つい知らず云った独り言を聞きつけられ、万三郎はどぎまぎして頭を掻いた。

「いやなに、べつに、こっちのことです」

女はふっと笑った。万三郎のまごついたようすが、子供めいていて可笑しかったらしい。好意のあらわれた笑い方で、数寄屋のひと棟へ案内した。

「どうぞ此処で暫く、――」

そう云って女は去った。

数寄屋は深い樹立に囲まれていた。彼の通されたのは、炉の切ってある部屋で、無風流な彼にはわからないが、火のない炉に、古ぼけたような茶釜が掛っていた。天床は網代というのだろう、壁は砂ずりだし、なにかの消息の残欠で裾張りがしてあるが、これも彼の眼には、書き損じの反故にしか見えなかった。

「壁が古くなって剥げたので、反故っ紙で繕ったんだろう」

軽蔑したように呟いた。