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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

万三郎は雨水の溜まった路上に転倒したが、そのとき見た男の姿が、今そこにいる相手の躯つきそのままである。昼間はわからなかったが、灯を背にして立っているのを見て、初めて、はっきりと思いだした。

――決して間違いはない、あのときの男だ。

こう気づくと慄然とした。

このまえのときも、よろめきながら去ってゆくうしろ姿には、一種の凄味があった。それは「妖気」といったふうな、かなり異常なものであったが、今、眼の前に立っている躯からも、それと同じものが感じられた。

――段違いの腕だ。

万三郎はそう直覚した。

――しかも尋常の剣ではない。

万三郎は肚を据えた。

「やあどうも、これほど用心堅固とは思わなかった、失敗ですな」

「黙ってあがれ」

「あんまり手荒にしないで」

座敷の中から女が云った。

「あたしの大事な人なんだから、足が汚れていたらこれを使わしてあげて」

手拭を投げてよこした。万三郎はそれで足を拭きながら、男を見あげて云った。

「後学のために聞かしてもらおう、よほどの腕とみえるが、いったい貴方は誰です」

「おれの腕がわかるのか」

「鷺と鴉ぐらいの見分けは誰にだってつくさ、これでも念流と小野派を少しばかり噛っているからね、名を聞かせてもらえないか」