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おばけのしょうたい

おばけの正体

井上 円了

線上閱讀井上 円了《おばけの正体(おばけのしょうたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,925 字 · 145 頁

青空文庫

第六一項 顔を振っている幽霊

こやつ胡乱と引っとらえ、本署へ引致のうえ取り調べしに、この者は赤坂区青山南町に住する無職業鈴木正司という無頼漢にして、欅に攀じ登り、西瓜に火を点じて竿先に縛り、悪戯をなしたるよし白状したれば、説諭のうえ放免さる。

第六一項 顔を振っている幽霊

某小学教員が己の経験談として話されたことがある。場所は美濃国高須郡内の山間にして、夜中旅行の出来事である。途中、火葬場を通りかかりしに、青色の火が燃え上がっておる。これは身体を焼いておるのであると知った。だんだん近づくに従い、その火を隔てて若き婦人の顔が見えておる。かかる深夜に婦人のおるべきはずはない。その顔が青色に見ゆるのみならず、しきりに左右にふりつつある。このときこそ真に幽霊の現れたるものと思い、大声をあげて、「汝、なんの怪ぞ」とどなりたれば、幽霊と見し若き婦人が答えて、「ワシは明日嫁に行くものである。今日歯を染めんとするも、ドウしても鉄漿が付かぬ。しかるに、死人を焼きたる火にて鉄漿をとかせばよく染まると聞いて、昼は人目をはばかり、夜中ここに来たって歯を染めているのである」と申したので、ようやく化け物でないことが分かり安心したと当人の直話。