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おばけのしょうたい

おばけの正体

井上 円了

線上閱讀井上 円了《おばけの正体(おばけのしょうたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,925 字 · 145 頁

青空文庫

第一二八項 真怪の有無

これ天狗の所為なりと、自分も人もともに信じたとのことである。さてその屋上へは、梯子なくてのぼれるはずはないが、ただその傍らに大樹があって、もしその木にのぼり枝づたえに渡り行かば、屋上に達することができるとの話だ。されば、本人夢中に起きてその樹にのぼり、枝をつたって屋上に移りたるに相違ない。これを心理学にては睡遊と名づけておく。つまり、夢中の動作にほかならぬ。前の三里を往復したる話もやはり睡遊である。子供などがときどき夢中に起き上がって室内を歩き回り、再び眠りに就きて、翌朝自ら全く覚えざる作用を睡遊と名づくるが、これとかれとは、ただ、事の大小と時間の長短との相違に過ぎぬ。それゆえに、天狗の作用にあらざることは明らかである。

第一二八項 真怪の有無

以上述べたる妖怪談は、たいてい明治維新後に起こりたる出来事中、原因の発覚せしもののみを掲げたのである。その他に原因未詳の怪事はたくさんあれども、すでに知れたるものより推測すれば、およそ妖怪の正体はなんであるを知らすること、決して困難でない。つまり、世間普通にいうところの妖怪は真の妖怪でなく、むしろ妖怪の偽物である。