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おばけのしょうたい
おばけの正体
井上 円了
線上閱讀井上 円了《おばけの正体(おばけのしょうたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,925 字 · 145 頁
第一一〇項 衣類の切断
人はみなこれを狸の腹鼓であると申していた。しかるに、町内に住するものにて磯釣りに行かんと思い、午前二時に起き、支度して門を出ずれば、風評のごとく東南の方にて、はるかにトントンの声が聞こゆ。これなん狸の腹鼓である、その正体を見届けんものと思い、その方角をたどって静かに歩み行くに、行けば行くほど遠くなる。だんだん近づいて見れば、鍛冶屋の鞴の音であった。毎朝二時半ごろより吹きはじめ、五時ごろになれば人々みな起きて、世間の物音が騒がしくなるためにその音が聞こえぬ。遠くなり近くなるのは、その日の風の都合によるのである。また、快晴の夜に限るのは他にあらず、天気のあしきときには、雨風の音に紛れて聞こえぬのである。この一例についても、狸の腹鼓の原因が知れると思う。
第一一〇項 衣類の切断
明治三十年夏のころ、東京市内京橋采女町に一怪事起こり、一時新聞上の問題ともなった。こは活版業大村某の居宅の出来事である。箪笥、葛籠等に納めおきし衣類が、いつの間にか怪しの穴あきて着ることのできぬようになり、柱に掛けておきたる衣類が、故なくして中央より切断してるなど、実に不思議にたえぬとて、主人自ら来たりて余に相談せられた。