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おばけのしょうたい

おばけの正体

井上 円了

線上閱讀井上 円了《おばけの正体(おばけのしょうたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,925 字 · 145 頁

青空文庫

第六四項 紙幡の誤覚

と言われしも、これを辞して提灯を借り、本道を回りて帰宅し、右の次第を語りつつ翌朝さらに該所に至り見しも、さる物とては見当たらざりしが、その場と思う所より四、五間ほどへだたりたる所の木の枝にて、千葉(大根の菜)の二、三連かかりありけるを認めたりと。これ、日ごろ聞き覚えたる怪談のことなどを思い出でて、ものすごく思いし折なるに、かかる物の目に触れければ、恐怖の情一時に激発して、かかる幻覚を起こししなるべし。余輩愚俗の妖怪とするは、おおかたこの類ならんか。

この報告を読まば、「幽霊の正体見たり菜大根」といわねばならぬ。

第六四項 紙幡の誤覚

昔の話に、瓢箪を幽霊と誤って、刀を抜いて切ったものがあるというが、幽霊の誤覚の例は実にたくさんある。ある人の記するところによるに、今より四、五十年前に、東京と横浜との間に六郷川がある。その川筋に郷地と名づくる地名がある。ある夜、その村のもの二、三人づれにて、その日に葬式のあった寺の前を通りかかったところ、その門側に白衣を着たるものにて、腰より下は地より離れ、左右に動きつつある姿を見た。これ、世にいうところの幽霊に相違なしと思い、一同恐ろしく感じ、その近傍の酒屋へ逃げ込み、戸をたたいて寝入りたるものを起こしたれば、酒屋の若いものども、六尺棒を手に持ち、イザござれ、世に化け物のあら