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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

二

……まあ、月でも見ようか」

沢庵は、そこの石へ、腰をおろした。

二

「うぬっ、どうするか、見ていろっ――」

武蔵は、満身の力で、自分の身を縛めている老杉の梢をゆさゆさうごかしていう。

バラバラと、杉の皮や、杉の葉が、沢庵の頭へこぼれて来る。その襟元を払いながら沢庵は仰向いて――

「そうだ、そうだ。それくらい怒ってみなければ、ほんとの生命力も、人間の味も、出ては来ぬ。近頃の人間は、怒らぬことをもって知識人であるとしたり、人格の奥行きと見せかけたりしているが、そんな老成ぶった振舞を、若い奴らが真似るに至っては言語道断じゃ、若い者は、怒らにゃいかん。もッと怒れ、もッと怒れ」

「オオ! 今に、この縄を摺り切って、大地へ落ちて貴様を蹴殺してやるから、待っておれ」

「頼もしい。それまで待っていてやろう。――しかし、つづくか。縄の切れないうちに、おぬしの生命が断れてしまいはせぬか」

「何をっ」

「おう、えらい力、木がうごく。しかし、大地はびくともせぬじゃないか。そもそも、おぬしの怒りは、私憤だから弱い。男児の怒りは、公憤でなければいかん。われのみの小さな感情で怒るのは、女性の怒りというものだ」