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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

「何じゃ」

「竹筒へ、裏の清水を入れて来るで――」

茶屋の裏へ廻って、権六は、筧の水を竹筒へ汲んだ。――そして戻りかけたが、ふと、窓口から、薄暗い屋の内をのぞいて、足をとめた。

「病人か?」

誰か、藁ぶとんをかぶって寝ているのである。薬のにおいがつよくする。顔は、ふとんへ埋めているのでよく分らないが、黒髪が枕にみだれかかっていた。

「権叔父よ。はよう来ぬか」

婆のよぶ声に、

「おい」

駈けてゆくと、

「なにをしていなさる」

と、婆は、不機嫌だ。

「何さ、病人がいるらしいで」

権六が歩み出しながらいいわけすると、

「病人が、何でめずらしい。子どものような道草する人じゃ」

と、婆は叱りつける。

権六も、本家のこの隠居には、頭が上がらないものとみえ、

「は、は、は」

と、磊落にごまかしてしまう。

茶屋の前から、道は、播州路へ向って、かなり急な坂である。銀山通いの荷駄が往来を荒すので、雨天のひどい凸凹がそのままに固まっている。

「ころぶなよ、おばば」

「何をいやる、まだ、こんな道に、宥わられる程、ばばは、耄碌しておらぬわいの」

すると、二人の上から、

「お年より、お元気でございますなあ」