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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

「はははは、若先生、おそろいでよう似合いますぞ」

「嫌っ。……藤次さんは」

朱実が後ろを振り向くと、お甲は袂の下で、藤次の手に握られていた自分の手をあわててもぎはなした。

――その跫音や声は、又八のいる部屋のすぐ側を流れて行ったのである。

窓一重の往来を。

「…………」

又八の怖い眼が、その窓から見送っていた。青い泥を顔へ塗ったように、押しつつんでいる嫉妬である。

「何だッ」

暗い部屋へ、ふたたび、どかっと坐って、

「――何のざまだっ、意気地なしめ、このざまは、このベソは」

それは自分を罵っているのである。――腑がいない、小癪にさわる、浅ましい――すべて自分に対する自分の憤懣を発している所作なのだった。

「――出ろと、あの女めがいうのだ。堂々と、出て行けばいい。何をこんな家に、こんな歯ぎしり噛んでまでいなければならない理がある。まだ、俺だって二十二だ。――いい若い者が」

がらんと急に静かになった留守の家で、又八は独りで声を出していった。

「その通りだ、それを」

いても起ってもおれなくなる。なぜだ! 自分にもわからない。混沌と頭がこんがらかるばかりだ。

この一、二年の生活で、頭が悪くなったことを又八は自分でも認めている。