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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁
五
「作州の宮本村へさ、故郷へ帰れば、これでも、おふくろも、許嫁もあるんだから」
「そう、悪かったネ、匿まって上げたりして。――そんなお人があるなら、又さん一人で、お先に立っても、止めはしないよ」
五
掌でにぎりしめて、ぎゅうと、扱いてみると、伸びと反りとの調和に、無限な味と快感がおぼえられる。武蔵は、お甲からもらった黒樫の木剣を常に離さなかった。
夜もその木剣を抱いて寝た。木剣の冷たい肌を頬に当てると、幼年のころ、寒稽古の床で、父の無二斎からうけた烈しい気魄が、血のなかに甦ってくる。
その父は、秋霜のように、厳格一方な人物だった。武蔵は幼少にわかれた母ばかりが慕わしくて、父には、甘える味を知らなかった、ただ煙たくて恐いものが父だった。九歳の時、ふと家を出て、播州の母の所へ、奔ってしまったのも、母から一言、
(オオ、大きゅうなったの)
と、やさしい言葉をかけてもらいたい一心からであった。
だが、その母は、父の無二斎が、どういうわけか離縁した人だった、播州の佐用郷の士へ再縁して、もう二度目の良人の子供があった。
(帰っておくれ、お父上の所へ――)と、その母が、掌をあわせて、抱きしめて、人目のない神社の森で泣いた姿を、武蔵は今でも、眼に泛べることができる。