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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁
「お通様がとおる」
「あの人がお通様か」
と、畑の者は見送っていた。
わずかな間に、彼女の名が、畑の者にまでこう知れ渡っているわけは、畑の者と石舟斎とが、百姓と領主というような窮屈な関係でなく、非常に親しみぶかい間がらにあるので、その大殿のそばに近ごろ、笛をよくする美しい女が侍いているということから、彼らの石舟斎に対する尊敬と親密が、従って、彼女にまで及ぼしている実証であった。
半里ほど来て、
「綿屋という旅籠は?」
駒の上から、農家の女房に聞くと、その女房がまた、子供を背負って、流れで鍋の尻を洗っていたのに、
「綿屋へ行かっしゃれますか。わしが、ご案内いたしますべ」
用をすてて、先へ駈けるので、
「もし、わざわざ来て下さらなくても、およそ口で仰っしゃって下さればようございますのに」
「なに、すぐそこだがな」
そのすぐそこが十町もあった。
「此家だがな、綿屋さんは」
「ありがとう」
降りて、軒先の樹に、駒をつないでいると、
「いらっしゃいまし。お泊りですか」
と、小茶ちゃんが出てくる。
「いいえ、こちらに泊っている吉岡伝七郎様を訪ねて来たのです。――石舟斎様のお使いで」