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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

故郷美作の国の――あの高照の峰の附近で――夜ごとの山狩に追われつつ、飢えと心身のつかれに、頭も朦朧となっていた時、ふと、耳にひびいて来た笛の音ではないか。

あの時――

こう来い、こうお出で。――と自分の手をとって導くように呼び、そしてついに、僧の沢庵の手に捕まる機縁を作ってくれたその笛の音ではないか。

武蔵は忘れても、武蔵のあの時の潜在神経は、決して、忘れることのできない感動をうけていたにちがいない。

その音ではないか。

音がそっくりであるばかりでなく、曲もあの時のと同じなのだ。アッと、突き抜かれてみだれた神経の一部が、

(――オオ、お通)

脳膜の中でさけぶと、武蔵の五体というものは、途端に、雪崩を打った崖のように、脆いものになってしまった。

見のがすはずはない。

四高弟の眼には、そのせつな、破れ障子のような武蔵のすがたが見えた。

「――たうっッ」

正面の一喝と共に、木村助九郎の肘がまるで七尺も伸びたかのように眼に映った。――武蔵は、

「かッ」

その刃先へ喚き返した。

総身の毛に火がついたような熱気をおぼえ、筋肉は、生理的にかたく緊まって、血液は、噴き出そうとするところの皮膚へ、激流のように集まった。