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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

けれど、密雲はまだ濃い。

「このあとをどうする?」

たれも、保証できなかった。一角の密雲がくずれると、一天すべて激変の相を呈しだすのが天象のつねであり、地上の自然均等である。

いや天地のうごきは、激変のようで、実はまた、極めて徐々と推移しているようでもある。

ここ二、三年のまに、過去となった重要な人だけでも、指を折るとかなりある。

西国の巨藩、毛利元就の死んだおととしの同じ年に、東海の雄、北条氏康が世を去っている。

しかし信長にとっては、ことしの武田信玄の死と、義昭の退場ほど、大きな意味を含むものはない。

わけて、たえず北の後ろをおびやかされていた信玄の死は、もう彼にとって、全力を注ぐほうへ注ぎ得る強味となった。

思うに、これからの将来は、一そう戦乱が激化するだろう。

――われこそ中原へ。

と、室町幕府のないあとへ、旗を打ちたてて、諸国の武門が、競い出てくるにちがいない。

その前提として、

「叡山を焼打ちし、将軍家を逐った暴逆、信長を倒せ」

と、風当りを強めて来ることも疑いない。

信長は、そう観る。

そしてその機先を制し、かれらに何の聯携もつかないうちに、びしびしと叩いてしまうべきだと考えた。