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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

かれが古人にたいして、ひとなみ以上尊敬をいだく風があるのも、そういうところからも依って来ている。わけてかれがもっとも景仰しておかないひとは、楠木正成であった。

目下、西山荘を去って、かれの側にはいないが、家臣の佐々十竹が、旅行さきから先頃、西山荘へあててよこした書面には、

(はからずも、河内の一院で、楠公の神牌を拝しました。それには贈三位左中将とございました)

と、なお感慨をいろいろと書いて来ていた。

楠公の事蹟も遺址も、いまはあとかたもなく忘れられていた。

足利尊氏といえば、思いあわせるが、ただことばのうえで「なんこう」といっても、ひとはちょっと思い出さないような顔をしている今――元禄の世であった。

(いたましや、何がな、わずかのご事蹟でも見出したら、草をわけ、地をかえしても、つぶさに調べよ)

とは、かねて老公から、その地方へ出張中の吉弘元常や佐々十竹にも、篤と命じてあったことなのである。

で、十竹の報告を得ると、かれは、天意というか、天縁というか、自分の至誠があるものにとどいたようなここちがして、あくる朝、

(ゆうべは、欣しさのあまり、ひと夜中、眠られなかった)