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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁
ふだんの柔順を一変して、兇猛に近い眼いろにすら見えた。
けれど、その勘太は、すぐうつ向いて、石のこばを鑿でくんくん叩きはじめた。懸命に彼方を見まいと、自制しているらしいのが、鑿の音にもわかるのだった。
「おい、みんな、これ権三までもどうしたものだ。……なぜ仕事をやめる、仕事をせい、仕事を」
ひとり佐々介三郎だけは、初めから眼もくれずに、黙々、鍬の手をつづけていた。
「あれほど、わしがいってあるのに、聞きわけのない。……こうして働いている汗にも、蠅もたかれば虻も来る。そんなものに、いちいち熱り立っていては何もできん。――さあ仕事仕事仕事で忘れろ」
介三郎のことばには、たれも逆らう気になれないのである。忌々しさはべつに措いて、また一同は仕事へ向き直った。
この数日で、仕事はいちじるしく進んでいた。虫を抑えて、仕事へ癇癪をうちこんだのが、能率をあげた一因かもしれない。地形はほぼすみ、底石をしき、鏡の入れてある石棺まで埋めこんだ。
あとはそのうえに亀石をすえ、壇石に組みあげることになる。石材の磨きだの彫りだのは、すでに出来ているので、築きあげる順序になれば、眼にみえて竣工は近づく予定である。