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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《梅里先生行状記(ばいりせんせいぎょうじょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 頁

青空文庫

もちろん雪乃、お蕗の母子も見えている。

又四郎も今夜はおとなしい。棒のごとき無口は相かわらずだが、空井戸の底の哲学と、都会の実世態とは、だいぶ彼を学ばせたらしい。

かれに比して、林助のほうは、そう変らない。ちょっと、小さな戦いの前線へ行って、いまは帰って来ているというふうだ。こんな夜なども、嬉々として友と飲んでいる。

「吉例だそうですから、茶を煮て、老公のお好みのまんじゅうをさしあげよう」

ひとまず、酒のかたづいたあとで、介三郎は客一同へそういった。例の老公好みの浙江まんじゅうが一個ずつ各、盆に載せられて茶とともに供された。

「また、雪乃のみやげか」

老公がたずねると、

「いえ、これは別人の献上でございます」

と、介三郎から披露した。

「てまえが、湊川のご建碑を奉行しておりますあいだ、終始、懸命に働いてくれた人夫のひとりに、勘太という者がおりました。もと那珂河原で、無宿者や物乞いどもの頭をしていた男でございますが……」

そのはなしは、老公も、介三郎からとくに聞いていたし、家臣たちも聞きつたえて、近頃の異聞とみな記憶に新たなことであった。

けれどその勘太は、介三郎がここへ帰山した当時、過って江戸で人を殺し、自首して出たということを聞いている。