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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
言わず語らず、万太郎をそばに据置いて、手厳しく懲らしめている吉宗は、この機に峻厳たる彼の半面を見せました。
注進の者は、将軍家の叱咤に会って、ハッと恐れ驚いたまま吹上の方へ引返して行きましたが、その後の白け渡った無言の行が、刻一刻と過ぎてゆくうちに、不意な方角で、バリバリッという物音がひびきました。
「やっ? ……」
ひとしく、吉宗や万太郎の眼は、望楼の上へつり上がりました。早、暁に近い静寂を破って、異様な音がきこえた所は、たしかに高い楼上に違いありません。
一同の胸に、何か知らず、ハッと不意を衝かれたような狼狽が走った途端です――
「御免!」
と叫びながら、将軍家と万太郎のうしろから、袴の股立を引ッからげて、櫓の階段を駆けのぼッて行ったのは、相良金吾でありました。
「ヤ、ヤ? ……あの音」
つづいて将軍家も床几を立つ。
万太郎も辺りの動揺につり込まれずにはおられません、素破と立って、言い合せた如く、金吾のあとから望楼へ向って駆け上がる。
真っ先に、その頂きに駆けつけて来た金吾は、そこに立つ咄嗟に、実に驚くべき不敵者を見ました。
何処をどう逃げて、どこから此処へ伝わって来たものでしょうか、まさしく、そこに立っていた人影は日本左衛門です! ピオの白骨の祭られてある白木の壇から、夜光の短刀をつかみ取って去ろうと