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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

鬼女面

が、それには、目もくれないで、

「――少し頼みたいことがあって、実ア四ツ目屋から御迷惑でもつけて来たんだ。ねえさん、一ツおれに、案内をしてくれまいか」

「……案内ッて? ど、どこへですか」

「それがわかるくらいなら……」と思わず含み笑いをもらして、

「知っているのは、お前だけの行く先だ」

「? ……」

「四ツ目屋へ持ってきた伊太利珊瑚、あれは、どこからおめえ持ち出して来た。なみの屋敷や町家の土蔵じゃあるまい。あれ程の品がある穴なら、まだまだ、存分、金目な品が埋ずまっているはず、案内してくれというのはその穴だ」

かの女がカッとした一時の熱い動悸は、まぶかな編笠の顔をのぞくにつれて、ようやく刃を抱かされたような冷たい身ぶるいに変っています。

鬼女面

「どこだ? お前の家は」

「知りません」

「自分の家を知らない?」

「だって、あたし」

「じゃ、あの伊太利珊瑚はどこにあった品物だか、それを言え、その屋敷の名を聞かせろ」

「知らない。あたし、そんなこと……」

「シラをきるな」

「私、人に頼まれたんだもの」

「うるせえッ」

「…………」

「案内しろ!」

「いやです」

「ウム、じゃ仕方がねえ。夜どおしでも、お前の帰る所へついて行くだけの話だ」