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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
逃水の果てへ
どうしてといえば。
それも石神様だけが知っていたこと。いや、神通力のない釘勘でも万太郎でもが、もう少しあとに残って様子をうかがっていたら、必ず、同じあやしいものを見たにきまっている。
足音が遠のいたかと思うと――すぐその後です。
ふと気がつくと、いつの間にか、威厳おそろしき石神の首が変っている。
立兵庫にきらめく銀の簪が一本、うりざね顔の全体は、夕顔の花より白く縁がとれて、そっと、石神のうしろから立つと、その肩越しに、前の暗い穴をのぞいたのが――まるで石体の無名神そのものの首が代ったかと見えたであります。
「ばかだねエ」
丹頂のお粂はひとりで笑っていました。
逃水の果てへ
その翌朝――夜が明けると同時のことです。
耕作に出る毎朝の通りがけに、きまって石神堂のまわりを掃除する土地の百姓が、
「おや、落とし物がある……」
堂の前に、泥だらけとなっていた振分と菅笠を見つけ出し、不審そうに見廻すと、ぬれ縁には蝋燭の痕だの、あたりには狼藉な足痕だのが、何か異状のあったことを、まざまざとそこに描いていました。
「大変だ!」
おそるおそる喜連格子をのぞいた途端に、吹っ飛ぶように馳けて行った男の声が、やがて後方の畑から、土着のたれかれを寄せ集めて来て、