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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
梅香鬼
「錦霜軒の臥龍梅もまだ早いかな?」
「あれは、わけても遅い方で」
「お、錦霜軒で思い出したが――」と吉宗はふと足を止めて、
「黒鍬の小早川剛兵衛はその辺に見当らぬか」
「お召とあらば、見てまいりましょう。近頃、山吹のお茶屋の手入れにかかっております故、あの附近に居るかと存じます」
庭を駈け出した源次郎は、やがて黒鍬の組頭剛兵衛を連れて戻って来ました。時ならぬ場所で、不意のお召に、剛兵衛は何事かと、吉宗の前にひざまずき、
「何ぞ、お庭の手入れに、悪いところでも、お目に触れましてござりましょうか」
と、畏る畏る顔色を仰ぎ見る。
「そういう咎め立てをするのではない」
と、吉宗はまず古参の老庭師が心配顔を安堵させて、
「呼んだのはほかでもないが、過日、そちが案内に立って吹上へ参った尾州の万太郎の事じゃ」
「おう、あのお方の事でござりますか。それについて、剛兵衛からも、いつぞや、お側衆まで申し上げておきましたが、お上のお耳には」
「いや、何も聞いておらぬ。尾州家の気まま者ゆえ、誰も、なるべく噂を避けているのであろう。――ところでその後、彼は如何いたしているな」
「相変わらずにござります」