輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

「いいや、それは、石ではありません。二枚かさねて袋になっている表紙の中に、わたくしがソッとかくしておいたのは、種子です、ある植物の種子なのです」

「え、種子が」

「端の方をすこし歯で破りました。出してごらんなさい。あ! ……ですが、こぼさないように、それをなくしては大変です」

いわるるままに、お蝶は、貝のような白い手のひらの上へ、中の黒いつぶを零してみました。

なるほど幾つぶかの植物の種子です。

まるみのかかッた三角形のその種子は、お蝶も日本で見たことがあるようですし、そうかといって、手近な枇杷や梅や野菜の種子ともまるで変っていますので、

「なにかしら」

と、小首をかしげているばかり。

これがどうして、ありかの方角を知る磁石なのか、秘密をあける鍵なのか。

疑惑は依然として疑惑で、さらにふしぎが深まるのみであります。

「お蝶さま、それは羅馬のペトロ院の庭や、カピトルの岡にたくさん咲く、めずらしくない花の種子です。色は王妃の舞踏服のように真ッ赤で、なぜかこの草を折ると茎から血がしたたると昔から申します。それで、羅馬の人はこの花を鶏血草とよんでいますが、たれも手にふれるものはありません。