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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
江戸及び江戸の御府外を中心として、関東一円にわたるふつうの絵図面に、今日までに探り得た要所要所を朱点や暗号で、いちめんにしるしつけられた物であります。
(江戸市西北の広野!)
それは、切支丹屋敷でかのヨハンがお蝶へ指さし教えた手懸り。
御府外を西北に去る平野といえば、そこは草茫々たる武蔵野の原のほかにはない。
南は多摩川を境とし、北は中仙道、西は秩父の連峰、東は江戸の町を境界に、今見るその絵図面にもグルリと朱の点線が打ってあります。
九兵衛はそれへかがみ込んで、
「ウーム……」
と、何かうめいている。
「この中だ」
日本左衛門はその点線を、火箸の先でグルリと書いて見せながら、
「図で見れば、一尺四方に足らないこれだけの中だが、さて、尋ねてみると、武蔵野の広さがわかる。ことに、その方角を知っているのは、おれ達ばかりではない、まず」
と、指を折って、
「お蝶が知ッている。道中師の伊兵衛がかぎつけている。――徳川万太郎はまだそこまで深く知らないが、あのお坊っちゃん気質の一途に、夜光の短刀にはたれよりも強い執着をもっていて、これも、雲霧の知らせによると、近頃、武蔵野の奥へ姿を見せたそうだ。