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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
そこにも、樹間をチラチラする提灯の幾つかが、狐火のように浮遊して、しきりと行く手行く手の先を尾け廻しましたが、裏山を越えて、次の木賊谷へのぞむと、もう逃げる天地は自由なものです。
ほっと息をついて新助が、
「兄貴、ここまで来りゃあもう大丈夫だ。それにしても、親分はどうしたろうな」
と、秦野屋の姿をふりかえりますと、いままで、かごのわきに尾いていた九兵衛の姿が見当りません。
「おや」四方をすかして、
「秦野屋――おい、秦野屋――」
こう呼ぶと、四、五間うしろで、
「おお」
九兵衛がわらじをおさえて、かがみ込んでいるのが分りました。
「どうしたんだ」
「踏み抜きをしてしまッた。……ア痛、ア痛。と、とんでもねえ物を踏みつけて」
「えっ、釘でも踏み抜いたのか」
「まっ暗で、何をふんだのかわからねえが、右の足が、ち、血だらけだ……。ウーム、どうにも痛くって立つことができねえ。おめえは先へ行ってくれ、早く先へ」
「でも、兄貴を捨てて」
「なアに、おれはまた、どうにでもして後から追いついてゆく。だがおめえは、これから落ちてゆく道をどう取ってゆくつもりだ」
「雁金峠の裾を縫って、奥秩父から中仙道へ出ようと思う。