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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁
こんな言葉が聞こえて来た。
(まあまあまあ)
と菊女は思った。
(鵜の丸様も佐原様もおいでになるそうな。……いるところは上村の奥の林とか! ……今夜夜討ちをかけるとか! ……鵜の丸様たちに早く逢いたい! ……そうしてこのことをお知らせしたい! ……上村の奥の林とはどこだろう?)
どっちみち一旦海岸へ出て、漁師に逢って上村の所在を聞き、そこへ訪ねて行かなければならない。――こう思って菊女は木蔭から出た。
と、三十郎の声がした。
「菊女殿とうとう目付けましたよ」
「あッ」
と菊女は叫びながら、飛び退いて背後を見た。
冷笑しながら三十郎が、懐手をして立っていた。
「前には紀州の藩士たちがいる、背後には拙者がいる。これが本当の絶体絶命! 菊女殿こまりましたなア」
憎々しく三十郎はそう云った。
菊女も心でそう思った。
(これこそ絶体絶命だ)と。
で、無念そうに黙っていた。
「菊女殿、声を立てましょうか? 女ながらも明暦義党の、同志が一人ここにいると」
「…………」
「するとそなたは紀州藩士に、すぐに捕えられてはずかしめを受けよう」
「…………」
「それとも拙者と参られるか?」