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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

故郷へ、西の都へ

一

「ち……ちッとも、ぞんじませんで、道にまよってきてしもうたのでござります」

「見れば、質朴そうな坂東巡りの者、道にまよってきたものならば、深くはとがめないが、一応吟味の上でなくては放してやるわけにはゆかない。しばらくそこでひかえていろ」

こういうと、若い神官たちは、べつになにかいそぐ目的があるらしく、ばらばらと千年山毛欅の根もとへかけあつまった。

三人ほどの者が、袖をからげて山毛欅の上へよじのぼっていった。そして、ご神刑にかかっている、忍剣のいましめを解き、抱くようにして下ろしてきた。

さだめし、疲れているだろうと思ったところが、案に相違して、忍剣はすこしも衰えていなかった。それもそのはずなのであるが、神官は理由を知らないので、いよいよふしぎな怪僧であると、舌をまいておどろいた。

「まだ、二十一日には満つまいに」

と、忍剣は、きょうの赦免が、夢のようであるらしい。

が、事情をきいて、心から欣ばしそうな色が、さすがに、その面を生々とさせた。

一足おくれて、御岳の奥の院からここへ越えてきた人々があった。それは、神主の長谷川右近を道案内として忍剣健在なりや否や――と一刻をあらそって、迎えに見えた一党の朋友たちである。