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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

石投げの名人

一

そこは、釜無川の下、富士川の上、蘆山の河原に近いところである。燕作は、思いのほかすばしッこい竹童をもてあまして、手捕りにすることをだんねんした。そのかわり、かれはにわかにすごい殺気を眉間にみなぎらせ、

「めんどうくせえ、いッそ首にして呂宋兵衛さまへお供えするから覚悟をしろ」とわめいた。

ひきぬいたのは、二尺四寸の道中差、竹童はぎょッとしてはね返った。とすぐに、するどい太刀風がかれの耳たぶから鼻ばしらのへんをブーンとかすった。

哀れ竹童、組打ちならまだしも、駈け競べならまだしものこと――真剣の白刃交ぜをするには、悲しいかな、まだそれだけの骨組もできていず、剣をとっての技もなし、第一、腰に差してる刀というのが、頼みすくない樫の棒切れだ。

石投げの名人

一

秋の水がつめたくなって、鮠も山魚もいなくなったいまじぶん、なにを釣る気か、ひとりの少年が、蘆川の瀞にむかって、釣り糸をたれていた。

少年、年のころは十五、六。

すこし低能な顔だちだが、目だけはずるく光っている。鳥の巣みたいな髪の毛をわらでむすび、まッ黒によごれた山袴をはいて、腰には鞘のこわれを、あけびの蔓でまいた山刀一本さしていた。