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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

燈籠売りははねあがってあおくなった。

「大へん大へん、鎧屋さん、はやく逃げたがいいぜ、鬼玄蕃がきやがったにちがいない」

にわか雨でもきたように、あたりの商人たちも、ともどもあわてさわいだが、かの若者だけは、腰も立てずに悠長な顔をしていた。

案のじょう、そこへ旋風のようにあばれまわってきた四、五人の侍がある。なかでも一きわすぐれた強そうな星川玄蕃は、つかつかと鎧屋のそばへよってきた。泥酔したほかの侍たちも、こいつはいいなぶりものだという顔をして、そこを取りまく。

「やい、町人。この槍はいくらだ」

と玄蕃はいきなり若者のそばにあった朱柄の槍をつかんだ。

「それは売り物じゃありません」

にべもなく、ひッたくって槍をおきかえたかれは、あいかわらず、無神経にすましこんでいた。

「けしからんやつだ、売り物でないものを、なぜ店へさらしておく。こいつ、客をつる山師だな」

「槍はわしの持物です。どこへいくんだッて、この槍を手からはなさぬ性分なんだからしかたがない」

「ではこの鎧が売りものなのか。黒皮胴、萌黄縅、なかなかりっぱなものだが、いったいいくらで売るのだ」

「それも売りたい品ではないが、お母が病気なので、薬代にこまるからやむなく手ばなすんです。