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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

四

四

呂宋兵衛が得意とする水術に眩惑されて、かれをとり逃がしたのは遺憾だが、勝頼の駕籠をうばったのは、せめて伊那丸の心をなぐさめるに足るものであった。

「待て待て、忍剣。龍太郎も待て!」

伊那丸は、なおも憎ッくき賊を追おうとするふたりを止めて、

「このたび都へまいったのは、まず何よりもお父上の危急をお救い申すにあった。いまここに、その駕籠を迎えまいらせた以上、呂宋兵衛を討つのは、いまにかぎったことではない。それ、一刻もはやく、お駕籠のうちからお救い申しあげて、小太郎山のとりでへもどろうぞ」

「おっしゃるごとく、それこそ、大願の目標でした」

「忍剣! 手をかせ」

「はッ」

と、主従三人、バラバラと駕籠のそばへ寄っていったが、ああ、去年の春、織徳連合軍の襲うところとなって、天目山の露と化したまうと聞えて以来、ここにはやくも一めぐりの春。――いまこそ、亡き君とのみ思うていた、武田四郎勝頼その人のかわれる姿を拝すことができるのかと、龍太郎も忍剣も、思わず胸をわななかせて、大地にひざまずき、伊那丸もまだその姿を拝さぬうちから、睫毛になみだの露をたたえている。

一同、駕籠のまえに、ピタと両手をついて、