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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁

青空文庫

なにか、今日ばかりは、はればれしい旅ごこちがした。伊那丸も民部も、そして、龍太郎やそのほかの者も。

そう思うこころの矢さきへ、峠の間道を、のんきな唄がとおっていった。崖の下へきた時に、小文治がのぞいてみると、裾野で見おぼえのある鼻かけ卜斎、唄は、おともの蛾次郎が、大きな口を天へむかって開いているのだ。

「オヤ」

と、向こうで気がついて、すぐわき道へ影をかくしたので、一行の者もあえて追わず、そのままさきをいそいでゆく。

そしてようよう、駿遠の山境を踏破してきた。もとより旅人もあまり通らぬ道、里数はあまりはかどらない。服織という二、三十戸の山村、みな素朴な山家者らしいので、その一軒へ伊勢の郷士といつわって宿をかりた。

はいった家は、その村の長の邸らしい。

土着の旧家らしい土塀や樹木が、母屋を深くつつんでいた。

渓流へいってからだを洗い、宿の主にひかれて、奥の一室へ落ちつくと、床に一幅の軸がかかっていた。それはその部屋へはいったとたんに、だれにもすぐ目についた。

伊那丸はサッと色をかえて、

「亭主」と案内してきた村長を見おろした。

「はい、なにかお気にさからいましたか」