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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《神州天馬侠(しんしゅうてんまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 頁
三
「旦那、支度はまだですか」
燕作の足は、もう、やたらにピクピクしてきたふう。
「おお、よいぞ」
というと、巽小文治、ひらりと神馬草薙の鞍つぼにかるく飛びのった。
「待った!」
と、目付の人々はあわてて、そこから合図の手をあげると、ドウーンと三流れの太鼓が鳴りこむ。
なお、いざ! というのはまだである。
太鼓は三色の母衣武者が、試合場の左右から正面へむかってかけだす報らせだった。そこには、矢来と二重に結いまわされた柵がある。柵の周囲の群集を追いはらうと、そこのひろい城戸が八文字にあいて、御岳山道の正面のみちが、試合場からズッとゆきぬけに口をあいた形になる。
――刻、すでに七刻ごろの陽脚。
満山のもみじに、しずかな午後の陽のいろが、こころもち紅を濃くしてきた。
おりこそあれ、短笛の音。
ここに、最後の勝敗をけっする、騎馬徒歩、遠駆けの試合の矢声はかけられた。
わーッと、いう声におくられて、正面の城戸を走りだした白馬草薙と、天下無類の早足の持主、もう、御岳の広前から真ッさかさまに、その姿を見えなくしてしまった。
神は欺くべからず
一
いくら天下の早足とじまんをする燕作でも、騎手は巽小文治、馬は逸足の御岳の草薙、それを相手に足くらべをしたところで、もとよりおよぶわけはなく、勝とうというのが押しのつよい量見。