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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

「――天皇御謀反」

などという言葉すらも洩れている。

現在、都の探題職には、北ノ六波羅に北条範貞、南ノ庁には北条維貞がつめていた。飛札は、その南北探題の連名である。

それによると。

すぐる四月初旬頃より、またまた、宮廷では、昼夜のわかちなく、中宮(みきさき)御懐妊祈祷の大秘法を行うている――とのこと。

が、これだけなら、皇室の一私事だ、何でもない。

問題は、またまた、というところにあるらしい。中宮懐妊おん祈りの大修法は、すでに、おととし元亨二年の春にも聞えたことで、鎌倉が知っただけでも、これで数回なのである。

しかも、いっこうに、

中宮御産気

とは聞えて来ない。

いや御妊娠のもようだに窺われないのに、年々の大祈祷とは不審である。――六波羅ノ庁では、かねがね宮中に隠密として入れてある者をして、入念にさぐらせてみると、果たせるかな、世のつねの加持祈祷でないことがほぼ判明したとある。

従来とて、諸山の高僧に仰せくだして、さまざまな秘法を修せられたことは明らかだが、過去の行法は、誰々がしたのやら、調べもつかぬ。――しかし、この四月においては、次のごとく明白、と記述していた。