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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

が、それを世の人は、

「暗愚な君」

と、ひそかに誹る。

ひとり執権幕下にその傾きがあるだけでなく、高時の行状は、いちいち京方にも響いてゆくので、都人のあいだですら、

「うつつなき人」

と呼ばれている。

げに、うつつなき人、高時ではあった。しかし自身が求めてこうなったわけではない。

父は相模守貞時。執権職にあげられたのは、わずか十四のときだった。

だから国事は、妻の父秋田時顕、内管領長崎円喜(高資の父)などに任せきりで育ったのである。そのうえ多病で、病むといつも大熱を出した。あらぬ口走りや、ふるえを起して、看護や一族をおびやかすので、いよいよ以て、言いなり気なりに、そのわがままをつのらせた。

よく世上でいう日夜の宴飲、闘犬狂い、田楽陶酔といったような遊戯三昧の行状も、この人としては、べつだん世の賢者にたてついたり、身の宿命に反逆しているわけではない。ただ運命に殉じ、運命に弄ばれている彼なのである。

で、日常どこか、病影が翳していた。

体は小柄で、顔はまろい。そのくせ肉が薄かった。眉太は、北条氏の血統的な特徴だが、やや尖り鼻だし、唇は受け唇の方で、ぽかっと、かなつぼ眼が異様だった。