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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
登子
だが、政所召集は、当夜の一回きりだった。――あの直後、“中宮御産祈祷の真相”をさぐる秘命をおびた者が、武者所から京へ急派されたなどの一事は、当然、ごく少数しか知ってはいない。
「なんのこと、人騒がせな」
街の表情は、雨のない黒雲の一過を頭上に見送ったように、すぐ忘れた。
そして、鎌倉の五月は、まったく、べつな方へ人々の興味をかりたてている。
ここのところ、寄るとさわると、闘犬興行の噂であった。
月例の上覧闘犬のほか、五月の“犬合せ”は、鎌倉中のお犬祭りといってよい。鳥合ヶ原には大矢来が結いまわされ、一般人の見物がゆるされる。着かざッた男女は遊山気分で矢来にむらがり、飲んだり唄ったり、また大びらに銭や賭け物を賭け、競馬のような声援や雑鬧をみせるのだった。
いよいよ、その日という朝。
高氏は、大蔵の自邸で、出仕支度していた。
扇ヶ谷から、ここへ移って来たのも、つい四、五日前である。病床の父貞氏には、
「……長々御心配をおかけ申しました」
と、不孝を詫びたのみで、あらましは、伯父憲房の報告にゆだね、父子らしい語らいは、まだ沁々とはしていなかった。
――が、その朝、正装をすますと、高氏は父の病間へ、両手をついた。