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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

「裏の河原のあたりも」

「御念にはおよびませぬ」

「……ならば安心」

若いが、あらわにも、盟主の風をみずからゆるしているかのような俊基だった。

志士的な語気、多感らしい朱唇や、きらきらする眼。

それに宋学の造詣もふかく、よく下情に通じ、時局にたいしては、つねに鋭い批判を持ち、またその献策もしばしば用いられるなど、天皇後醍醐のおたのみはたいそう深い。――で自然、堂上の若い層を牛耳って、その先駆者をもって、みずから任じているのも、道理とこそは思われた。

一味の公卿には、日野姓が二人いる。

日野蔵人俊基と、もうひとりは権ノ中納言日野資朝だ。

資朝の方が、身分も上だし、年も二つ三つ上だった。系図上では一族だが、近親ではない。風貌も一方の水際立った美丈夫なのにひきかえて、彼はやや猪首で固肥りなうえ、色浅黒い鈍重そうな人物だった。

また、寡黙である。

いつも、同姓俊基の余りに切れ味のよすぎる弁舌を、危ぶむように、眉ごしに、じろ、じろと見ては、猫背ぎみに、物を案じているといった風。

が、世間では二人を、

“日野の双輪”

と、称びならべて、いずれも、現天皇の寵臣として、兄たり難し弟たり難き者と見ていた。