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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

さて、ここでまた御酒一興。

次いで、くだけた“お遊び”が始まる。つまり公卿たちの催馬楽(歌謡)や管絃だった。

中宮ノ大夫実衡の琵琶、大宮ノ大納言の笙、光忠宰相のひちりき、中将公泰の和琴、また笛は右大将兼季、拍子は左大臣実泰。

――かくて、つきぬ御遊の後、お帰りとなったのは、夜もほの明けていた頃だった。

還御は雪の中。

やがて、夜どおし陣ノ内(警固区域)に立武者していた滝口や六波羅の人数がくずれ去って散るころは、陽もギラギラと淡雪の道は泥に解けだしていた。

「いかがでした、若殿」

「昨夜か」

「されば、お望みのことは」

「む。院の舎人に物をくれて頼うだら、中門の遣り水の裾の木立に忍ばせてくれた程に」

「では、上(天皇)のお姿を、まざと御覧ぜられましたな」

「いや、雪さえ降るに、御簾の内、明らけくはなかったが、笛の座につかれたみ姿の線、おのずからな御威容、さすがはと拝せられ、世上、しきりに新帝の英邁を沙汰するのも、道理よと、うなずかれた」

「それは、よいお国みやげ。さようにお望みもかのうた上は」

「オ。伯父上との約束。いちど六波羅のやしきに戻って、支度をあらため、すぐにも都を立ち去ろうよ」