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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

すると、後から、追っかけ足が、松明、空輿、馬上の人影などが、近づいて来た。すれすれに側を駈け抜けて行くのを見ると、それは直義たちだった。

直義はふり向いて、相鞍の二人へ言った。

「やあ、先駈け御免。……お二た方、ごゆるりと」

――執権御不例

と一般にまで、高時の病が公にされたのは、かなり日を経てからだった。

なぜか、それまでは、華雲殿のらちゃくちゃない騒動もくるめて、柳営はこれを、秘していた。

「困ったもの」

と、眉をひそめ合って、当夜の聞取りやら、善処に当った重臣の意が、さしずめ、そこに帰したのだろう。

世上への外聞もまずい。

内には、綱紀の頽廃を招こう。

従来とて、高時の風狂的発作は一再でないが、おちついた後は、月余で常態に復している。こんどは前例にないお物狂いであったが、やがては御本復を仰ぐに相違あるまい。「……天下多事のさい、かかる御風狂沙汰は、都への風聞もいかがなものか。まずまず秘しおくに如くはなし」というのが、一致した意見であったかと思われる。

ところが、その後。

鎌倉童の遊戯に“天狗遊び”とよぶものが流行り出していた。たそがれ頃の辻々ではよく見かけるのである。