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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
兄高氏と佐々木道誉が、駒を並べて、何か談笑しつつ此方へ来るのだった。いずれも、この日は鎧だが、とくに道誉の、鉢金打った風折烏帽子に、彼らしい派手好みな陣装いは、ひと目で彼と、すぐ分る。
わけがわからぬままにも、直義はすぐ、兄と道誉の二騎の前へ、駈け寄っていた。
「兄上、郎党たちは」
「あとよりまいろう」
「佐野十郎には」
「会わぬ。何か、火急か」
「いやべつに」
兄との会話は、そこで、ぷつりと切って、不承不承に、連れの道誉の馬上へも、形式的に頭を下げた。
「佐々木殿か。まずは、馬揃いも事なく相すみ、同慶にぞんじまする」
「オ。御舎弟だったの」
道誉は、高氏の横顔へ、チラと訊ねてからまた直義の面をじっと見入っている。
「直義どの」
「なんだ」
つい、反感が迸しった。
だが道誉の方には、こたえもしない。頬の黒子はニュッと笑う。
「む。なかなかよい弟御だ。兄思いだわ。ひそかにお案じだったとみゆるよ。ハハハハ、いや、昨夜のそれがしよりの文使いでは、それも道理か」
「……?」
直義は、迷ぐらかされた思いである。睨みつける意識で、ぐっと睨みすえた。
そのまに、傍らの高氏は自分の駒を降りていた。